永遠の王

T.H.ホワイトの名作です。
超長かった。
途中で中断したとはいえ、上下あわせて1年半くらいかかりました。
作者の介入が鬱陶しくて、読む気が減退します。
あと、構成ももうちょっと工夫の余地あり、かも。


しかし、なんといっても骨太のアーサリアン・ファンタジー
これまで生半可な知識しかなかったアーサー王伝説をきちんと知ることができました。
なるほどね。
ホワイトの独創も多々入っていたようですが、それでも現代アーサリアン・ファンタジーとしてはもはや正統といって差し支えないでしょう。


アーサー王伝説の悲劇性については、ギリシア悲劇を彷彿とさせますね。
というかモードレッド関係の部分の構造はオイディプス伝説とほぼ同じ、か。
主人公の立ち位置が正反対ですが。
悲劇は読んでいて愉快ではありませんが、強くひきつけられますね。
おもしろいということなんでしょうか。
登場人物たちが、まっしぐらに破滅への道を驀進する様は、ある意味で滑稽です。
悲しいまでに滑稽。
しかし優美。愚直なるcourtesy。
騎士物語の醍醐味ってやつですね。
あと、最後のサー・ガウェインに対する解釈がシビれました。
そう来たか。


惜しむらくは、アーサー自身への言及の少なさですか。
アーサーは後半ほとんど狂言回し的な役割しか演じていません。
偉大なる騎士王は、円卓の長であるサー・ランスロットよりもなお魅力的な素材だと思うのですが。
選定の剣を抜き、エクスカリバーを振るった、選ばれしかの王の雄姿をもうちょっと見てみたかったです。


永遠の王〈上〉―アーサーの書 (創元推理文庫)

永遠の王〈上〉―アーサーの書 (創元推理文庫)

永遠の王〈下〉―アーサーの書 (創元推理文庫)

永遠の王〈下〉―アーサーの書 (創元推理文庫)