文学部唯野教授のサブ・テキスト

以前読んだ『文学部唯野教授』の関連本ですが、出版社が岩波じゃなくて文春ですね。
いや、別にどうでもいいんですけど。


基本的には別にたいしたことはないというか、つまらないというか……
三部構成で、一部が唯野教授へのインタビュー、二部が筒井康隆の対談、三部が『文学部唯野教授』の中で触れられていた「ポスト構造主義による『一杯のかけそば』分析」となっています。
一部、二部は森博嗣がよくやってるような感じですね。
90年発行なのでこっちの方がだいぶ早いですが。


この本で一番面白いのは第三部「ポスト構造主義〜」です。
これが一番唯野教授っぽいです。
これは、架空の短編かどうかは知りませんが、「一杯のかけそば」という短編に対してポスト構造主義的分析を加えているものです。
この分析の仕方はロラン・バルトっぽいですね。
先学期にロラン・バルトの「物語の構造分析」を読んだからそう思うのかもしれません。
つまるところ唯野教授の文学批評なんでしょうが、これは明らかにポスト構造主義への皮肉として書かれています。
わざとトンデモっぽく分析して、ポスト構造主義の分析がいかに恣意的で公正を欠くものかを実証するものでしょう。
バルトの分析に対しては僕も唯野教授と意見を同じくしています。
有栖川有栖の『作家小説』に収録されている「作家漫才」という作品をバルト的に構造分析したことがあるのですが、そのときにいかに恣意性を含んでいるかを認識しました。
要するに、批判したいように批判できてしまうわけです。
このあたりは象徴論とも絡んでくるので、ターナー『象徴と社会』あたりが参考になるかと思われます。
まあ、そんな小難しく考えなくても単純に可笑しいですが。


ブクオフで100円で買ったものですし、こんなものかなと言ったところ。
古本でもプロパーで買うようなものではないですね。


文学部唯野教授のサブ・テキスト (文春文庫)

文学部唯野教授のサブ・テキスト (文春文庫)