平面いぬ。
ここのところ、エラリィ・クイーン『Xの悲劇』に騙されて傷心の思いを癒すべく読んでいるのが乙一です。
あんな読みにくくいくせに肝心の部分は丸わかりのクソミステリに当たってしまったあとだったので、国産でミステリ以外の作品が読みたかったのです。
最初に選んだのは『天帝妖狐』これがなかなか面白かったので、続けて選んだのが本書です。
1つめの「石の目」こそ、へぇーくらいのものでしたが、次の「はじめ」でやられました。
すごいです。
ありえない設定、それによってできあがるちょっと不思議だけどどこにでもありそうな小気味よい日常。
高1か高2で読んでおけばもっと衝撃を受けたでしょう。
乙一は、あの頃の僕が持っていて、今の僕が鈍らせていたものを未だに鋭く持ち続けているに違いありません。
つまり、世界に対する鋭敏な感覚です。
薄皮一枚隔てた隣の世界。しかしすでに薄皮は溶けてなく、その異質性は無限になきに等しい。
そして最後、表題作の「平面いぬ。」を読んで完膚無きまでに打ちのめされました。
間違いなく乙一は天才の類の人間でしょう。
これはもう、僕には書ける気がしません。
さっぱりした感動といったところでしょうか。
好きな作家のリストに乙一が加わった瞬間でした。
- 作者: 乙一
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