月光ゲーム

学生・有栖川有栖シリーズの1作目にして有栖川有栖のデビュー作です。

推理小説(ミステリ)としての巧拙よりも、青春小説としてのまずさがやたら気になります。
どうにも心理描写がうまくないです。
『双頭の悪魔』のときはむしろそれがよかったと思ったんですが。
1作目から3作目の間に進歩したんでしょうかねえ。

推理の部分に関しては、まっとうなフーダニット。
相変わらず僕は考えるのを放棄して受動的に読んでしまいますが。
筋の通った説明には感心させられます。
証拠はなくても、蓋然性の限りなく高い論理。
巧妙なトリックを使ったものとは別の見事さですね。
思うに、トリックは犯罪者の芸術ですがフーダニットは正真正銘探偵の芸術です。
派手さはないですが、論理の細い細い綱渡りを味わえると思います。

もちろん、僕はそういう楽しみ方をしていないだけで、自分で解くという楽しみ方もできるのでは。

あえて点数で評するなら64点といったところですかね。
50点が標準です。
成績で言うなら可の中ではいい方。
基準はきわめて適当ですが。


月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)

月光ゲーム―Yの悲劇'88 (創元推理文庫)